喫茶 月森
美味しいホットケーキの店があるということは知っていたけれど、食べログの口コミを見ると、ハードルが高そうで、今まで足を運ぶ機会がありませんでした。
神戸六甲にある小さな喫茶店では、ホットケーキを注文してから、一時間は待つのです。
私が訪れた時、先客は1組だけで、ちょうど彼らのためのホットケーキが焼かれている最中でした。
メニューからホットケーキと珈琲を注文。
店主らしき女性は、小声でホットケーキに一時間かかること、飲み物の提供も40分は待つことを告げました。
どうして珈琲に40分?
と、疑問が頭をもたげましたが、先に珈琲だけ来ても、飲み終わるまでにホットケーキが出てこないのは確かなので、了解しました。
ちなみに、だったらホットケーキと同時に持ってきてもらいたいと思いましたが、初回はこの店の流儀に従うことにしてみました。
小さな店内は、一人客か二人連れを想定した席の配置で、とても静か。
待ち時間が長いのを考慮してか、様々な本が置かれています。
私は鞄に読みかけの本を入れてきたので、それを読みながら待つことにしました。
やがて先客にホットケーキが運ばれ、続いて私の分のホットケーキ作りがスタートしました。
カチャカチャと、泡立て器を回す音がして、どうやら材料を混ぜるところから、一回一回やっているみたいです。
ずいぶん長い間、かき混ぜるなあと思っていると、新しいお客さんが入ってきて、ホットケーキは2時間待ちですと、厳かに告げられました。
彼らの次に入って来た人は、当然ながら3時間待ちと言われ、帰っていきましま。
泡立て器を回す音がようやく聞こえなくなったと思った頃、今度は珈琲の準備が始まりました。
いい香りがするなー、早く飲みたいなーと、最早手元の本の内容は頭に入っていません。
そうして出された珈琲は、香りが高くとても美味しく感じました。
ゆっくり珈琲を頂いて、それを飲み終わる頃に、ようやくホットケーキの登場です。
一枚と二枚が選べるのですが、私は当然二枚を注文しました。
綺麗に焼かれた厚いホットケーキが二枚が重なった姿は、まるでホットケーキミックスのパッケージの写真のように美しく、テンションが上がります。
ホットケーキの生地は上等のカステラを思い出すような匂い。バターとメープルシロップが合わさると、どこか懐かしい味に。
ぐりとぐらの焼いたカステラってこんなのだったのかなあと、ふと思いました。
普通に珈琲を飲みたいだけの人は、このお店には来ないでしょう。
だけど、待つのを承知でやってくる人がたくさんいる。
待ち時間も含めて、この場所にいることを楽しむ。
贅沢な時間の使い方だなあ、と、思いました。